交通事故における同乗者の慰謝料
1 同乗者について
⑴ 同乗者とは
この記事でご説明する「同乗者」とは、車を運転していないで、単に車に乗っている者のことを指します。
⑵ 同乗者の過失
同乗者の過失は、基本的にはありません。
0%です。
ですので、損害賠償請求は、事故の相手方車両の運転者等や、自分が乗っていた車両の運転者等にできることになります。
2 同乗者の慰謝料について
⑴ 同乗者の慰謝料もほかの被害者と基準は変わらない
同乗者だからといって、慰謝料が増額されることはありません。
傷害(入通院)慰謝料については、原則として、入院期間や通院期間に応じて算定されます。
後遺障害慰謝料についても、認定されている等級に応じて相場が決まっておりますので、同乗者だからといって増額されることはありません。
⑵ 同乗者が減額される場合
例えば、同乗者が、運転者が無免許であったり、飲酒運転であったりと、運転技術が未熟であったり、精神や心身の状態が万全でないのに、運転をさせたとか、それを容認していた場合には、同乗者の同乗していた車両運転者に対する損害賠償請求において、賠償額から、例えば1~2割程度(事情によりもっと高くなる場合もあり得ます)減額されることがあります。
3 運転者と同乗者が家族のような親しい関係にある場合
家族4人(父、母、息子、娘)が同じ車に乗っていて事故に遭ったケースを考えていきましょう。
父親が運転者で、その他の家族が同乗者だとします。
⑴ 追突事故の場合
追突事故にあった場合、追突された車両の過失は0%です。
この場合には、被害車両の同乗者である母、息子、娘は、過失が0%である父親(夫)には、損害賠償請求は法律の理屈的にできません。
⑵ 右折vs直進事故の場合
例えば、青信号の交差点を、直進していた被害車両が、右折してきた車と交差点内で衝突した場合、直進車両の基本過失割合は20%と考えられています。
この場合、被害車両を運転していた父親の過失は20%で、右折車両の運転者の過失は80%です。
被害車両の同乗者である、母親、息子、娘の立場からすると、加害者は、右折車両運転者と直進車両運転者の父親の二人いることになります。
法律の理屈上は、同乗者は、共同不法行為者である加害者のどちらに対しても、100%の割合の損害賠償請求をすることができます(二重取りができるわけではありません)。
仮に、右折車両運転者に100%賠償してもらったとすると、右折車両運転者は自己の過失を超える分まで同乗者たちに賠償したことになるため、事故の過失を超えた部分の20%分については、父親に、「あなたの過失分まで払ったから、その分は返してください」と返還請求することができます。
これを、「求償」といいます。
この場合、父親は、母親(妻)、息子、娘の賠償額の20%を自己負担しなくてはなりません。
家族の場合には、このような求償が起きないように、最初から同乗者たちの過失も、本来0%であるけれど、運転者と同じ20%の過失を控除して、右折車両運転者だけに請求していくという運用が一般的です。