交通事故の同乗者に過失が問われる場合
1 同乗者の責任
同乗者は、運転者と異なり車両の運転をしているわけではないので、通常は、事故に対する責任はありません。
しかし、①運転者が飲酒していることを知りながら同乗した場合などの、事故発生が生じる可能性があることを知りながら同乗した場合、②運転者に飲酒をさせるなど、同乗者自ら事故の危険を招いた場合、③シートベルトの着用を怠った場合などには、事故発生または事故による負傷について、同乗者にも責任があるとして、同乗者に対する賠償金が減額されることがあります。
2 事故発生が生じる可能性があることを知りながら同乗した場合
運転者が、飲酒・薬物・過労などのため、正常な運転ができない状態であることを知りながら同乗した場合です。
また、「運転者が無免許」であることについて、①免許を取得したことがない場合と、②免許を取得したが更新しなかったため無免許となった場合がありますが、同乗者の過失が問われる場合について、①・②の両方とする考えと、②に限るとする考えがあります。
②に限るとする考えは、②の場合は、いったんは免許取得の試験に合格しており、運転に必要な技量は備わっていることを理由としています。
3 事故発生をもたらすような危険な運転を同乗者がそそのかすなどした場合
同乗者が運転手に速度違反をそそのかしたり、一緒に飲酒する、運転者と一緒に暴走行為に加わるなどの場合がこれに当たります。
4 上記2、3の事情が事故発生の原因となっていること
同乗者の過失が問われるのは、上記2、3の同乗者の行為が、事故発生の原因となっている場合に限られます。
例えば、同乗者は運転者が無免許であることを知っていたが、事故の原因は、無免許であることではなく、運転者による信号の見落としである場合などです。
5 同乗者のシートベルト不装着
道路交通法では、運転者が同乗者にシートベルトを着用させる義務を負うとしていますが、運転中にシートベルトを着用すべきことは一般的なルールとして知られている状況にあるため、運転者の指示の有無にかかわらず、同乗者がシートベルトの装着を怠り、かつ、これが同乗者の負傷の原因となっている場合には、同乗者の過失とされます。
6 同乗者の過失が認められた場合の効果
過失相殺により、同乗者の運転者に対する賠償請求の額が減額されることになります。
同乗者の過失が認められるか、認められるとしてどの程度賠償額が減額されるかについては、難しい問題となることもあるので、弁護士に相談されることをおすすめします。
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