物損の示談を先に行うときの注意点
1 相手方への賠償請求
交通事故に遭い、相手方に賠償請求をする際、相手方が任意保険に加入している場合には、相手方が契約する保険会社に対して賠償金の支払を求めることが一般的です。
この際、相手方の保険会社の担当は、物損担当(自動車など物の破損に対する賠償の担当)と、人損担当(けが、後遺障害及び死亡といった、被害者の心身に生じた損害)に分かれ、それぞれが示談交渉を行います。
また、一定期間(多くの場合、数か月以上)を要するけがの治療に比べ、車両の修理のほうが早く終わることが多いため、人損の示談よりも、物損の示談の方が先に行われることが多くなっています。
2 先に物損の示談を行う場合の注意点
⑴ 過失割合についての合意が人損の示談に影響する
示談の対象となる交通事故が、交差点での衝突事故などのように、双方に過失割合が発生する事故である場合、過失割合の検討は、相手方保険会社の物損担当との間で協議され、その合意が、人損の示談でも引き継がれることが一般的です。
このため、物損の示談の際、過失割合について検討不十分なままで合意してしまうと、これが人損の示談の際に不利に働くことがあります。
物損の示談における過失割合の合意については、人損の示談にも影響することに留意して、慎重に行う必要があります。
⑵ 賠償額の減少
訴訟(裁判所での裁判)では、被害者からの賠償請求について、これを認める判決がされた場合、賠償の対象となる元金のほかに、所定の範囲で、弁護士費用や遅延損害金も認められることが一般的です。
これに対し、示談の場合は、弁護士費用や遅延損害金の支払いはされないのが通常です。
このため、人損について裁判となる見込が高く、物損の示談について急ぐ必要がないのであれば、物損・人損の両方について裁判所での裁判としたほうが、被害者が受け取る賠償額が増える可能性があります。
3 弁護士にご相談ください
交通事故の示談では、今回お伝えしたこと以外にも、様々な注意点があります。
まずは一度弁護士に相談されることをおすすめします。
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