交通事故の示談交渉
1 交通事故の示談交渉とは
交通事故被害者の方は、加害者に対し、事故によって受けた損失を補うだけの金銭を請求する権利を持ちます。
この金銭の額を、話し合いを通じて決めていく手続きのことを「示談交渉」といいます。
2 示談交渉の交渉相手
⑴ 相手方が任意保険会社に加入している場合
相手方が任意保険会社に加入している場合、示談交渉の交渉相手は、相手方の保険会社になります。
⑵ 相手方が任意保険に加入していない場合
【自分の保険を使えない・使わない場合】
相手方本人と交渉することになります。
【自分が加入している人身傷害保険特約や無保険車特約などを使用する場合】
交渉する必要なく、金銭を受け取ることができます。
ただし、自分側の保険を使用して保険金を受け取る場合には、約款に決められた金額でしか保険金は支払われません。
そのため、損害に見合う補償とならない可能性もあることには注意が必要です。
3 示談交渉の手段・方法
⑴ 示談交渉の手段
交渉の手段は、電話、FAX、メール、郵送などで行います。
対面での交渉は通常行いませんので、弁護士と保険会社が離れていても、交渉は可能です。
⑵ 示談交渉の方法
損害賠償請求の示談交渉は、基本的には、請求する側が高い金額で初回の請求を行います。
それに対し、相手方は低めの金額で初回の回答を行うことが通常です。
ここからお互いが譲歩する等して、最終的に金額が折り合うところで示談を成立させるというパターンが多いです。
いくらの金額でまとまるかは、交渉する弁護士の手腕に左右されるところが大きいため、弁護士は慎重に選ばれることをおすすめします。
4 示談交渉の期間
⑴ 示談交渉のおおよその期間
交渉の期間は、事案によってケースバイケースです。
早いと、数日で終わることもありますが、長いと数か月以上かかることもあります。
おおむねですが、数週間から1か月程度で解決することが多いです。
⑵ 示談交渉が長引く場合の原因
交渉が長引く原因として、考えられることはいくつかあります。
1つは、保険会社側の検討に時間がかかることがある場合です。
事案の検討に時間がかかっている場合や、担当者が上司の決裁を受けるのに時間がかかってしまっていることもあります。
また、保険会社ごとに運用ルールは違うと思いますが、賠償金がおおむね1000万円くらいと高額になってくると、担当者とその上司だけの決裁では足りず、部長決裁などの、より上部の機関の決裁が必要となることが原因で、交渉期間が長引くことがあります。
5 示談交渉がうまくいかなかった場合の対応
示談交渉がうまくいかなかった場合には、次のステージに進むことを検討します。
紛争処理センターなどの機関を利用したり、訴訟を提起したりすることです。
弁護士にご依頼いただいていましたら、このような示談交渉決裂後の訴訟等についても、引き続きサポートを受けていただくことができます。
当法人は、交通事故の依頼をこれまで数多く解決してきており、示談交渉がスムーズに進むよう、適切に対応させていただきます。
船橋で示談交渉をお考えでしたら、当法人の弁護士へとご相談ください。
保険会社が加害者と同じ場合における示談交渉
1 双方が同じ保険会社の場合
交通事故の被害にあったとき、加害者と被害者が同じ保険会社に加入しているケースが少なからずあります。
実はこのような状況では示談交渉に注意が必要な場合があるのではないかと気にされる方がおられることでしょう。
2 同一保険会社による相反する立場
被害者側としては、損害賠償額を1円でも多く受け取りたい。
加害者側としては、1円でも損害賠償額を低く抑えたい。
このように、同じ保険会社でありながら、立場は真逆の状態が生じていることになります。
このような状況では、「利益相反(りえきそうはん)」の問題が生じます。被害者からすると、保険会社が自分の利益を十分に守ってくれるのか不安になります。
たとえば、「過失割合で不利な提案をされるのではないか」「後遺障害の認定に消極的な対応を取られるのではない」「休業損害や慰謝料を低く提示されるのではないか」と不安になると思います。
3 弁護士に依頼すべき理由
このようなケースでは、被害者が自らの立場を守ろうと考えて、弁護士に相談・依頼することを検討した方が良いと思います。
弁護士に依頼すれば、保険会社の内部の都合に左右されず、被害者の利益を最大限追求する交渉が可能になります。
特に、弁護士費用特約に加入していれば、多くの場合、自己負担なく弁護士に依頼できるため、心理的・経済的なハードルも下がります。
4 神経質になる必要がないこともあります
とはいえ、損保会社が同じといっても、通常は、違う部署、サービスセンターが担当することも多く、そうすると、同じ保険会社でありながら、特にそれを意識することなく、対応している場合も多く見受けられます。
ですから、保険会社が同じ場合には、必ず不利にされてしまうかというとそうではないこともありますので、そこまで神経質になる必要はありません。
5 中立性が疑わしいときは、必ず弁護士に相談を
加害者と自分の保険会社が同じというだけで、交渉が不利に進むリスクがありえます。
示談提示に納得できない場合や、不安を感じる場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめいたします。
交通事故が起こってから示談交渉までの流れ
1 交通事故による受傷、物の損壊
交通事故により、乗っていた自動車等が損傷したり、ケガをしたり、身に着けていた衣服が破れていたり、所持していた携帯電話等の所持品が損壊します。
2 自動車等や所持品等について
物については、基本的には、時価額と修理金額のどちらか低い方の賠償金しか受け取ることはできません。
修理可能なものであれば、修理工場等に修理金額見積もりを依頼します。
修理できないものなどは、だいたいの購入時期や購入金額を申告することになります。
3 治療
ケガをした場合には、医療機関での治療を続けていくことになります。
軽傷であれば、数か月程度で完治することが多いですが、むち打ち症状の場合には、3か月~半年以上の治療を続ける方が多いです。
4 後遺障害申請
ケガが完治した方や、後遺障害申請するほどでもない方は、そのまま損害額算定、示談交渉へと進みますが、後遺障害申請をする場合には、症状固定と診断される時期まで治療を続けていくことになります。
場合によっては、症状固定後の治療を自己負担で続けていく場合もあります。
症状固定となったあとは、主治医の方に後遺障害診断書を記入してもらい後遺障害申請をしていきます。
5 後遺障害等級認定結果の確定
後遺障害申請後、ケースバイケースですが、おおむね1か月半~2、3か月程度で結果が判明します。
場合によっては、多少前後することももちろんあります。
妥当な結果であれば、そのまま損害額算定に進みますが、妥当な結果でなかった場合には、異議申し立て等を検討することになります。
6 損害額算定
後遺障害の結果を確定させたら、損害額算定の手続きに移ります。
ここでは、入通院期間によって、慰謝料金額を算定したり、仕事を休業した場合には、休業損害額を算定したりします。
後遺障害等級が認定されている場合には、後遺障害逸失利益の算定をしたりもします。
7 示談交渉
損害額が算定できましたら、いよいよ相手方に請求をかけていき、示談交渉スタートとなります。
事案の難易度によって、相手方からの回答時期は様々ですが、継承案件の場合には、1~3週間程度、後遺障害等級認定案件では、2~4週間程度、賠償金額が1000万円を超えてくるような高額案件では、2か月以上かかることもあります。
示談交渉ではどのようなことが問題となりやすいか
1 慰謝料
示談交渉で一番問題となりやすい賠償項目(争点)としては、慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)があげられます。
被害者側としては、裁判基準をもとに請求していくのですが、保険会社としては、裁判(訴訟)ではなく示談段階なので、被害者側が請求するよりも低い金額しか出せないとよく争われます。
どの程度の金額でまとまるかは交渉次第ですが、裁判をすることで増額が見込めるようなケースでは、最終的に裁判によって慰謝料が決まるということもあります。
2 休業損害
休業損害についても、問題となりやすいです。
例えば、むちうちの場合には、我慢すれば仕事をできなくはないため、保険会社担当者によって、事故日からいつまでの期間について休業損害を賠償してくれるのかはばらつきがでます。
また、主婦(主夫)である家事従事者の休業損害についてもよく問題となります。
どれくらいの期間について、どれくらいの日額で賠償するかを中心に交渉していきます。
3 逸失利益
⑴ 算定式
逸失利益は、下記計算式で算定されます。
【逸失利益の算定式】
①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間
⑵ ①基礎収入
自営業者であったり、失業中であったりすると、①の基礎収入が問題となりやすいです。
⑶ ②労働能力喪失率
後遺障害の種類によっては、②労働能力喪失率が問題となります。
例えば、顔に傷痕が残っている場合の外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)では、顔に傷があるだけでは、容姿が重要視される職業でない限り、労働能力に影響を与えることは考え難いと争われます。
⑷ ③労働能力喪失期間
労働能力喪失期間は、通常、症状固定時の年齢から67歳(労働可能年齢終期)までの年数か、症状固定時の年齢における平均余命の2分の1の年数のどちらか長い年数で算定されます。
しかし、むちうちでは、③労働能力喪失期間が3~5年の範囲内で争われることが多いです。