人身傷害保険から慰謝料を支払ってもらうのと、相手方から支払ってもらうのとでどのような違いがあるのですか?
1 はじめに
人身傷害保険は、事故による治療費や慰謝料などについて、相手方からではなく、被害者が加入する保険から支払を受けることができる保険です。
過失割合(過失相殺)が発生する事案では、人身傷害保険からの支払については、過失相殺による減額がありません。
このため、相手方から慰謝料を支払ってもらうよりも、人身傷害保険から慰謝料を支払ってもらったほうが、被害者にとって有利となることがあります。
2 過失相殺による減額がないこと
過失相殺が生じる事案では、相手方からの支払額は、過失相殺による減額がされた金額となります。
例えば、過失相殺が無い状態で慰謝料が合計100万円発生する事案で、過失割合について、被害者が1、相手方が9の場合には、被害者に支払われる慰謝料は、100万円の1割減の90万円となります。
これに対し、人身傷害保険から慰謝料を支払う場合、被害者に落ち度(過失相殺がされる事情)の有無にかかわらず、慰謝料は、保険契約で定められた一定の金額が支払われます。
相手方から慰謝料を支払う際、過失相殺により、大幅な減額が見込まれる事案では、相手方からではなく、人身傷害保険から支払を受けた方が受領額が多くなる場合があります。
3 過失相殺による減額がないことの具体例
過失相殺が生じる事案で、同じ金額の慰謝料を、相手方から受け取る場合と、人身傷害保険から受け取る場合で、被害者の受領額が異なる場合があります。
治療費、慰謝料がそれぞれ50万円、損害の合計額は100万円で、過失割合が1割の事案の場合、相手方からの賠償額は、100万円の1割の90万円となります。
これに対し、人身傷害保険より慰謝料50万円が支払われた場合、相手方から支払を受けることができるのは治療費のみとなります(慰謝料は全額支払済みのため)。
相手方からの治療費の支払額は、50万円の1割減の45万円となりますが、これに、先に人身傷害保険より支払われた慰謝料50万円を足すと、合計額は95万円となり、上記90万円よりも多くなります。
慰謝料額について、人身傷害保険からの支払については過失相殺の影響を受けないためです。
4 相手方が賠償金を支払う資力が無い場合
相手方の資力が乏しく、保険に加入していないことにより、相手方から治療費や慰謝料を支払ってもらうことができない場合があります。
このような場合でも、人身傷害保険から治療費等を支払ってもらうことで、損失を回避、緩和することができます。
5 おわりに
保険を上手に利用することで、事故による損失を回避、減少させることができます。
ご加入の保険会社、弁護士にご相談ください。
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